AMED 令和3年度「革新的がん医療実用化研究事業」に採択されました~消化器?総合、乳腺?内分泌外科学講座 浜部敦史助教らの研究チーム~

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の令和3年度「革新的がん医療実用化研究事業」(革新的がん治療薬(再生医療等製品)及びコンパニオン診断薬の実用化に向けた研究<若手育成枠>」に、医学部消化器?総合、乳腺?内分泌外科学講座 浜部敦史助教の研究が採択されました。

採択内容(AMEDサイトより抜粋)
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)は、令和3年度「革新的がん医療実用化研究事業」に係る公募(三次公募)について、本事業の課題評価委員会において厳正な審査を行った結果、下記のとおり採択課題を決定いたしました。

課題領域
【領域3-7】革新的がん治療薬(再生医療等製品)及びコンパニオン診断薬の実用化に向けた研究<若手育成枠>

研究概要は次のとおりです。

局所進行直腸癌に対する術前ctDNA検査をコンパニオン診断薬とする術前治療至適化技術の開発に関する研究

医学部消化器?総合、乳腺?内分泌外科学講座 助教 浜部 敦史

医学部消化器?総合、乳腺?内分泌外科学講座 助教 浜部敦史

局所進行直腸癌は大腸癌の中でも難治性の疾患で、手術のみでは高い再発率が問題となります。従来は骨盤内における局所再発が最多でしたが、術前化学放射線療法(CRT)を行なった後に手術をすることで、局所再発を制御することが可能となってきています。一方、遠隔転移は今もなお抑制することは困難で、現在、最大の解決すべき課題と認識されています。近年の臨床試験で、CRTだけでなく、術前に化学療法(NAC)を投与してから手術をすることで遠隔転移を抑制できると示され、これをtotal neoadjuvant therapy (TNT)と呼称します。今後、実臨床においてTNTの導入が進むと考えられますが、同時にすべての患者さんにTNTを導入すると、過剰な治療を受ける方が増加し、有害事象の増加が懸念されます。今後の治療開発では、TNTを含む新しい治療が、どの患者さんに対して本当に有効であるかを評価する“層別化基準”を確立することも重要となります。
 
現在、本邦においてリキッドバイオプシーによる個別化医療の実現を目指す新プロジェクト「CIRCULATE-Japan」が進んでおり、われわれも運営委員として参画しています。このプロジェクトでは、大腸癌患者さんの体内に存在する癌の状態を示すマーカーとして血液循環腫瘍DNA (ctDNA)を検査し、CTなどの画像検査で同定されず、かつ腫瘍マーカーなどの既存の血液検査では評価できない微小な癌病変(見えない癌)を検出することで、患者さん個別的に適切な術後治療を提供する未来を実現しようとしています。近年の遺伝子解析技術の進歩によって実現できた検査で、現在利用可能な測定方法の中で最も高感度な検査であるNatera社のSignatera(TM)を使用します。
 
今回、AMEDの支援を受けて実施する研究では、Signateraを用いて、局所進行直腸癌の術前治療の過程におけるctDNAの推移を解析し、ctDNAの挙動がその後の再発、生存とどのように関連するかを解明することを目的としています。現在の研究仮説として、術前にCRTを実施した後でもctDNAの陽性が持続する場合、その後の再発率が高くなると考えており、SignateraでctDNA陽性と判定された方には、薬物療法を逐次投与することで再発を抑制する治療戦略を提案できうると考えられます。薬物療法としては、従来使用されてきた化学療法の他に、免疫療法や腫瘍溶解ウイルス製剤など近年目覚しい発展を遂げている薬物を使用することを将来の構想に含めています。

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情報発信元
  • 研究支援課外部資金係